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ふむふむ、木村硝子店のなかまたち。#01

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第1回

小松誠(工業デザイナー)×木村武史(木村硝子店社長)

1980年からロングセラーを続ける小松誠氏の「クランプル」は、MOMAのパーマネントコレクションとして所蔵され、木村硝子店の歴史を語る上で欠かせない、記念碑的なシリーズとなりました。初回は小松さんのアトリエにて、社長との思い出話を交えながら、作品誕生までの秘話、今後の活動等、貴重なお話を伺います。壁一面にオブジェのように石膏型が並ぶアトリエは、一歩足を踏み入れれば異空間の様相。ゆるやかな初夏の風を感じながらの、楽しい「シワ話」となりました。

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瀬戸物のシワとガラスのシワ。
「クランプル」が生まれるまで

木村 こういう風に改まって話すとなると不思議な気がしますね。小松さんと最初に仕事したのは30年以上前になるんだよね。

小松 わあ、もうそんなになる?

木村 最初は「クランプル(*1)」のオールド。MOMAのパーマネントコレクションに入ったのが1984年だから、33年になるんだ。出会ってからは35年くらいたつんだね。

―もとからお知り合いだったのですか?

木村 作品を知るより先に、知人に小松さん本人を紹介されて、ちょこちょこ顔を合わせるようになっていたんだよね。で、きっかけになったのは「クリンクル(*2)」。
しわくちゃの紙のシワを瀬戸物(陶磁器)で表現するという発想!ボクもう、あれを見た瞬間に「ガラスで作ったらゼッタイ面白いはずだ!」って。すぐ小松さんに話をもちかけたの。

小松 そうでしたね。

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―それまで、ガラス作品は作られていたのですか?

小松 いや、初めてでしたよ。だから、瀬戸物で出せたクシャクシャ感をガラスで出すってどういうことなのか、仕上がりを想像しながら新たに原型を作って、石膏型を起こして。それをもとに、金型を工場の職人さんに託すんですが、初回のサンプルでは思っていたようにいきませんでしたね。やってみて初めて、ああこうなるのかって。

木村 そうなの。ガラスってね、ホントやってみないとわからない。今だってまだ分からないもの。ワイングラスの場合なんかだと、図面を引いて左右対称になるように作るので、大体想像がつくんだけど。そうだな、たとえば、ガラスの塊をつくるとするじゃない。表面の形がどうなって、光にどう反射していくかなんて、これはもう作ってみるしかないの。

小松 これです、最初のサンプル。偶然出てきましてね。

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木村 うわー、記憶にない!こんなだったの!

小松 シワっていうかなんていうか、ディテールが出ていないでしょう?瀬戸物と違ってガラスの表面はスルッと滑らかですから、細かい部分まで型の筋が入っていかないんです。それで、細かいシワより、大きなラインでうねらせたシワのほうが相性がよいのではないかと気がついた。でも、型は高価なものだから、作り直しは無理だろうし、困ったなあって。

木村 僕も最初のサンプルをどうも気に入らなくてさ。でも、口に出さずにいたんだ。

小松 細かい経緯は忘れたけれど、結局は木村さんがボツにしていいって言ってくれたんですよね。本当に有難かったです。

木村 あの出来事こそ、僕と小松さんのスタートだった気がするな。
あのとき、二人とも納得していなくて、偶然ね、好みが一致したっていうか、それがとにかくよかった。本当は商品なわけだから、売れるか売れないかという視点で始まったはずがさ。いつの間にか、気に入る気に入らないでやっちゃう自分たちがいるわけ(笑)。

小松 そうかも知れない。でも、やり直しといえば話はさらにあって(笑)。今の製品は「癖割り」になっているけど、当初は、割り線がまっすぐ入っていて、さらにやり直しているんですよ。

―「癖割り」って何ですか?

小松 斜めにうねったガラスのシワ(癖)に添って金型を割ると、継ぎ目がわからないんです。そうしてきれいに仕上がるよう、割り方を考えるんですよ。初期のものはほら、縦に線が入っているのでどこで割ったかすぐにわかってしまうでしょう。

―なるほど。型って縦にぱかっと割れているだけと思っていました。
製品によって、繊細に作られているんですね。

木村 小松さんと一緒に、マジック持って、ここで割ろう、ここで割ろう、みたいに金型の位置決めたりしたんだっけ?

小松 多分しましたよ。いやー、結局2回やり直したんですね。

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―「クランプル」は、見た感じと持った感じの印象が違うのがユニークですね。
ごつごつしているようでいて、スルッと手になじむというか。

小松 日本人って、触感みたいなものを大切にすると思うんですよね。それをもろに感じてもらおうかと思った。1度目の型の経験を経て、ガラスの個性に気づいたことから、ああいった自然なラインが生まれたんだと思いますね。

―何度もやり直すのは大変そうに思えますが、お話を伺っているとそうは見えないというか、楽しそうな空気ばかり伝わってきます。

小松 そうね(笑)。あの頃は、経済成長とデザイン活動の啓蒙期とが一緒になっていて、「とにかくおもしろいもの作っちゃおう、判断するのは後でもいいじゃないか!」みたいな空気があったかもしれない。「グラスはグラスらしく、お皿はお皿らしく」という風潮も強くて、そういう既成概念を壊せたらという思いもありましたね。

木村 どんどん作れていた時代かもしれないね。今は今で楽しく作れるけどね。

小松 まあ、いつの時代も、とにかく本人が面白がっていないと作れないし、面白がっていれば作れるよね。遊びの延長っていうかね、何事も、遊びの中から発明発見もすべて出てくると思っているんです。僕なんて、ここに座っているだけで、自然と遊び道具を探してる自分がいるの(笑)。結局それに尽きる気がするな。

MOMAのコレクションに選ばれて

木村 MOMAのコレクションに選ばれたときは、「クリンクル」も「クランプル」も一緒でしたね。

小松 そう。僕の作品の中では初めてのことだったんだよね。やっぱり、焼き物をやるなら、いつかはMOMAのコレクションにっていうのが大きな目標だったから、それが達成されてね。

―審査はどのように行われるんでしょう?

木村 僕らも現場にいて、目の前でね、キュレーターが議論するのを体験できるわけ。英語だから何言ってるのかさっぱり分からなくて、聞いてたっていうより見てたっていう感じだけどね(笑)。議論の末に生身の人間が決定するのを見ていて、すごいなあと思った。日本なんかだと、どうやって審査しているのか分からなかったりするじゃない、結果だけ来たりして。それを思うと欧米のやり方って新鮮だったよ。納得もいったしね。

小松 そうだったね。すごい迫力だったことだけ覚えてる。

木村 一緒にMOMAに行った帰りにさ、「結構簡単に決まっちゃうんだね、つまんないね」って小松さんが言ったのが俺忘れられなくてさ(笑)。

小松 いやー、有頂天になってましたよね。あの頃、なぜか出すもの出すものみんなコレクションにしてくれたんですよ。当時のキュレーターの感性とぴったり合ったのかなとも思うけど。結局は人が選ぶものじゃないですか。

木村 いや、そんなことないでしょう。あれはほんとに、時代にとって衝撃的だったというか、新しかったもの。残るものだったんだと、30年たって改めて感じますね。

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進化する、「現代の化石づくり」

木村 この3月に武蔵野美術大学を退官されたんですよね。おめでとうございます。新しい活動の辺りはいかがですか?

小松 実は今、一番熱中しているのは掃除なんです(笑)。きれいにしている間に、やりたいものがみつかるんじゃないか、なんて思っているんだけど。昔書いたスケッチとか、何かになるんじゃないかと思ってとっておいたものを見直したり。でも、これはっていうのは本当に少なくて、ほとんど処分しちゃった。

木村 やっぱり人間、進化というのか、やりたいことが変わってくるのか、時代や、周りの環境が違うと響いてこなかったり、そういうことはありますよね。

小松 とにかくみんな捨てちゃえばいい!みたいに割りきれない分大変です。石膏型もずいぶん処分しましたけどね。朝から晩まで悩みながら片づけしてるとね、へとへとになっちゃう。でもそういうとき、火を灯したりすると癒しになります。炎を見つめながら、これからのことを考えたりして(笑)。

―この、くるくるしたツルのようなものは何ですか?

小松 少し前から製作しているシリーズです。石膏でなくて粘土で焼いているんですけど、つるのようなくるくるひねった感じを出すのに、石膏よりも、粘土を棒状にして棒に巻きつけて形を作ったほうが良いんです。アトリエで、外の緑や蔓なんか毎日見ていると、こういうクルクルしたのをつくりたくなるんでしょうかね。生命力を感じるんですよね。

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木村 これまでの作品の延長にもなっていますね。

小松 そうね、「現代の化石づくり」(*3)というね(笑)。やっぱりそれはね、関わっていきたいなあと思っている。たとえば、これをグラスの中に挿すことで、自立した花器になったり、横に歯ブラシやペンも一緒に立ててもいいかも知れないね。暮らしの道具と共存しながら楽しめるものになればと思っているんです。

―既製品と組み合わせるという発想は面白いですね。
使う人によって、違う形、新しい形が生まれそうです。

小松 そう。ゼロから新しいものを作るというより、あるものを利用しながら、どこまで何が作れるか、提案できるかっていう。そういう考え方って、これからますます大切になってくると思うんです。

木村 「現代の化石」も時代によってアプローチが変化しているんですね。

小松 まだ途中ですけどね。でも、これ作るのも、説明するのも大変なくらい細かい工程をたどっているんですけど、型取りのステップって楽しくて。結局は、それに尽きる気がするんです(笑)。

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●対談を終えて…
今回の対談は、木村硝子店デザイナーの三枝静代さん、大町彩さん同席のもとに行われました。初回のお相手が小松誠さんと伺って、「世界の小松誠!さてどうしたものか!」と、終始緊張の連続でしたが、小松さんご自身は、そこにただそっとたたずむ、静かな植物のような方で、私のような素人の質問にも一つ一つ丁寧に答えて下さいました。クランプル誕生当時の失敗談など、本音がぽんぽん飛び出す木村社長との掛け合いは、永年の信頼の証なのでしょう。言いたいことを言いあっているように見えて、互いを気遣う固い絆を感じました。
アトリエは、石膏の型が壁一面にオブジェのように並んでいて、そのものが作品かと思ってしまうほどでした。それほどに型も美しいのです。何より貴重な体験だったのは、今なお進化し続けている、現在進行形の作品解説をして頂いたことです。かつての、「たくさんあるのはいいことだ」と誰もが思ってやまなかった時代を経て、人々が自分自身を見直し、「少なくても豊かなくらし」を目指すようになった現代において、どんなアプローチができるのか、日々模索し、楽しんで作り続けておられる姿に、襟を正す思いでした。
(構成・吉田佳代)

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【脚注】
* 1,2クリンクルとクランプル
しわくちゃの紙や膨らんだビニール等の表面を石膏で写し取り、型にして瀬戸物にしたのが、1974年に始まった「クリンクル」シリーズ。クリンクル(crinkle)とは「しわ、しわになる」という意味。シワシワの紙袋の他、シワのない紙袋、ビニール袋の花器やタンブラー等が瀬戸焼きで作られた。80年に誕生したのが、ガラス作品の「クランプル」シリーズ。
*3現代の化石づくり
人間が岩石を砕いて粘性を加えて形をつくり、瞬間的に高温で妬いた石ともいえる焼き物を、「現代の化石を作っているようなものだ」と小松氏は表現する。「クリンクル」も、本物のしわを写し取って焼き物にしているという意味で「化石」なのである。

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【プロフィール】
小松 誠(こまつ まこと)
東京生まれ、武蔵野美術短期大学工芸デザイン科卒業。70年から3年間、スウェーデンを代表する陶器メーカーGustavsberg社(グスタフスベリ)にて、Stig Lindberg(スティグ・リンドベリ 1916-82)に師事。帰国後、自身の工房を設立し、工芸的な作品づくりと共に、陶磁器を中心に、ガラス食器、カトラリ-、照明や家具等、多くのデザインを発表。作品はMOMAニューヨーク近代美術館をはじめ、多くの美術館に収蔵されている。
日本クラフトデザイン協会のクラフト展グランプリをはじめ、受賞多数。

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